本ブログでも何度か切り口を変えて取り上げてきていますが、2024年は量子コンピュータ領域にとって大きな転機の年となりました。
この分野は長年研究が積み重ねられてきており、いつかは商業化されると長らく期待されていましたが、2024年はついに商業化への具体的な動きが進み、投資家の注目を集めています。
商業化の進展、主要企業やスタートアップの動向、今後の見通しについてご紹介していきたいと思います。
量子コンピュータ商用化の動きと各企業の動向
2024年、量子コンピュータの商用化が大きく進展しました。特に、化学モデリングや材料科学の分野では、量子シミュレーションの活用が現実味を帯びています。巨大企業での動向とスタートアップ企業の動向をそれぞれ少し見ていきたいと思います。
Google、IBMなどの巨大企業の動向
IBMは2024年、1,000キュービットに達する量子コンピュータを発表しました。これにより、大規模なシミュレーションや高度な計算が可能となり、産業界での実践的な応用が進みました。また、IBMのシステムは、化学や金融モデリングの高度化に貢献しており、その成果が投資家の関心を引きつけました。
Googleもまた、「Willow」と呼ばれる新型量子コンピュータを発表し、高度な化学モデリングに活用されることが期待されています。Willowは効率的な量子アルゴリズムの実装に焦点を当てており、商業用途への対応が進んでいます。
Willowの最大の特徴は、誤り訂正に使用する量子ビット数を増やすほどエラー率を低減できる点です。
【出典】
スタートアップ企業の動向
2024年は量子コンピュータ関連のスタートアップ企業にとっても大きな動きがある1年となりました。関するベンチャーキャピタル(VC)の投資は2024年、さらに活発化しました。さらに、IonQやRigetti Computing、Quantum Computing Inc.といったスタートアップも、商業化を目指した具体的な成果を挙げています。
IONQの動向について
IONQの年初来株価は+264%と大きく伸びている状況です。
2024年においてバイオテクノロジー分野の企業との連携を強化し、政府系プロジェクトへの採用が進んだ結果、契約数が前年比で50%増加し、売上は約2億ドルに達しました。この成果は特に、量子コンピュータを活用した高度な分析能力の提供によるものであり、IonQの技術が新薬開発や遺伝子解析の効率化に貢献しています
もともと他のスタートアップと比べて高めの株価は更に上昇し比較的も安定している状況です。
【出典】
Rigetti Computing (RGTI)の動向について
RGTIの年初来の株価は+1747%と驚異的な伸びとなりました。
RGTIは今年商用量子サービスを提供し始め、前年と比較して売上が150%増加し、売上高は約7,500万ドルに達し、同社のクラウド型量子コンピューティングサービスが企業や学術研究機関から高い需要を受けていることが明らかになりました。
また、このサービスの利用により、顧客が分子シミュレーションや最適化問題の解決に大きな成果を挙げたとの報告もあります。
また、2024年中に2回、総額2億ドル(約300億円)の資金調達を実施しています。同社はこの資金を活用して、クラウド型量子コンピューティングサービスの拡大と、企業や学術研究機関向けの新たな商用アプリケーションの開発に取り組んでいます。
【出典】
Investor Relations | Rigetti & Co, LLC(外部サイト)
Quantum Computing Inc.(QUBT)の動向について
QUBTの株価については年初来+1983%とこちらも驚異的な伸びを見せています。
Quantum Computing Inc.(QUBT)は、防衛分野での応用に特化したサービスを提供しており、量子クラウドを基盤とする新しいセキュリティ技術が評価されています。これにより、政府や大手企業からの受注が増加しており、同社の市場での地位が向上しています。
また、こちらも2024年には総額9,000万ドル(約135億円)の資金調達に成功しました。QUBTについては長らく株価が1ドルを下回っており、上場廃止の危機にありましたが新規の受注と資金調達によりいったんこの危機は回避されたとみられています。
量子コンピュータ業界の今後の展望:業界と株価の見通し
2025年以降、量子技術産業はさらなる成長が予測されます。特に、AIやビッグデータとの融合が進むことで、量子コンピューティングの活用範囲が大きく拡大する見通しです。例えば、金融業界ではリスク分析やポートフォリオ最適化、物流業界では経路最適化への応用が期待されています。
さらに、ハードウェアのコスト削減やクラウド型サービスの普及に伴い、より多くの中小企業が量子技術を活用する可能性があります。これにより、業界全体の市場規模は2025年までに1,000億ドルを超えると予測されています。
企業そのものについては安定的な成長が期待されています。IONQは引き続き高い収益成長率を示す見込みであり、RGTIやQUBTもそれぞれの専門分野での市場拡大が予想されます。特に、QUBTは国防およびセキュリティ分野での確固たる地位を築いており、これが株価の安定に寄与すると考えられます。
ただし、ご存じの通り2024年の後半にはかなり早いペースでの上昇があったため、一時的な調整などは発生することもあり得ますので、あくまで余剰資金での投資をお勧めしたいと思います。
2025年以降も、この領域での技術革新と商業化の進展が続くことを期待していきたいですね。
ちなみに、昨年記述しました100バガーを目指すという記事ですが、実現可能性も少し見え始めていますので、今後も引き続きウォッチしていきたいところです。
それでは、また。