
Rigetti新プロセッサ・D-Wave大型買収・IonQ人材予測——保有3銘柄がそろって動いた2週間
前回の記事ではRigettiの英国投資計画の続報と、IBMのタンパク質シミュレーション研究を今後掘り下げると予告していました。今回は対象期間がやや長くなったこともあり、私が実際に保有しているRigetti(RGTI)・D-Wave(QBTS)・IonQ(IONQ)の3銘柄すべてに重要なニュースが重なりました。珍しいことで、さすがに冒頭でお伝えしておきたいと思います。それぞれ順番に整理していきます。
Rigetti、108量子ビット「Cepheus-1」の一般提供を開始——製品進化が着実に続く
4月8日、Rigetti Computing(RGTI)が新しい量子コンピューティングシステム Cepheus-1-108Q の一般提供を発表しました。Rigettiが提供するクラウドサービス「QCS(Quantum Cloud Services)」と、AWSの量子コンピューティングサービス「Amazon Braket」の両方からアクセス可能になっています。
108量子ビットの意味
前回の記事で「英国1億ドル投資計画で3〜4年以内に1,000量子ビット超を目指す」と書きました。Rigettiの前モデルはAnkaa-3の84量子ビットでしたが、今回のCepheus-1はそれを108ビットに引き上げたことになります。「1,000への道」に向けた着実なステップです。
量子ビット(キュービット)とは量子コンピュータの演算の最小単位のことで、数が多いほど複雑な計算に挑戦できる可能性が広がります。84→108という差は地味に見えますが、量子コンピュータの世界ではビット数だけでなく「エラー率の低さ」「接続性の改善」なども重要です。単純なビット数アップとは違う技術的な深みが伴っています。
市場の反応
4月10日のRGTI株は市場全体が下落する中で+2.52%(終値$14.67)を記録しており、このニュースが一定の買い材料として機能していたようです。「Cepheus launch」を取り上げたBarchartの投資家向け記事でも「マイルストーン達成が株価センチメントを改善している」と評価されていました。
保有者としては素直に嬉しいアップデートです。とはいえ108量子ビットはIBMやGoogleと比べるとまだ小規模であり、商業利用の実績が積み上がっていくかどうかが中長期での評価ポイントになります。
【出典】 - https://thequantuminsider.com/2026/04/08/rigetti-108-qubit-system-availability/ - https://www.barchart.com/story/news/1249467/as-rigetti-launches-its-cepheus-quantum-computer-should-you-buy-rgti-stock-now
D-Wave(QBTS)がQuantum Circuits Inc.を5.5億ドルで買収——業界初の「二刀流」企業へ
4月10日、D-Wave Quantum(QBTS)がQuantum Circuits Inc.(QCI)を約5億5,000万ドル(約800億円)で買収すると発表しました。量子コンピュータ業界でも有数の規模のM&Aです。
なぜこれが重要なのか
D-Waveはこれまで「量子アニーリング」と呼ばれる方式の専業企業でした。量子アニーリングとは、物流ルートや金融ポートフォリオなど「大量の選択肢から最善の組み合わせを探す」類の最適化問題に特化した計算方式です。一方、IonQやRigettiが採用しているのは「ゲートモデル」と呼ばれる汎用型の量子コンピュータ方式で、より幅広い用途に対応できます。
今回買収するQCI(Quantum Circuits Inc.)はまさにそのゲートモデル方式を開発している企業です。D-Waveはこの買収によって、アニーリングとゲートモデルの両方を提供できる業界唯一の企業になります。
保有者としての見方
この買収は「D-Waveがアニーリング専業という制約から脱却しようとしている」という強いシグナルだと受け止めています。商業・政府向けに幅広いソリューションを提供できるようになることは、競争力の観点でプラスです。一方で5.5億ドルという金額はD-Waveの現在の財務規模からすれば相当な負担になる可能性もあり、資金調達の方法や希薄化リスクなどは引き続き注視が必要です。大型M&Aには「1+1=3」になる場合もあれば、統合に苦労するケースもあります。焦らずに続報を待ちたいと思います。
【出典】 - https://finance.yahoo.com/markets/stocks/articles/d-wave-quantum-expands-dual-150831496.html
IonQ、「2036年までに量子人材が85万人不足する」と予測——産業スケールの拡大を示す数字
IonQ(IONQ)がヒューストン大学でのシンポジウムで発表した内容によると、2036年までに量子コンピュータ関連の人材が世界で約85万人不足する見通しとのことです。大学が年間に排出できる量子分野の専門人材の数と、産業界の需要の伸びを比較した試算で、大きなギャップが生じることが示されています。
投資家目線でこの数字をどう読むか
「人材不足の予測」は一見地味なニュースに見えますが、ここには2つのメッセージがあると考えています。
まず、85万人の需要が生まれるということは、量子コンピュータが「研究室の実験道具」にとどまらず「産業インフラ」として普及するシナリオを前提にしているということです。IonQがこの数字を公開の場で発信していること自体、自社の事業見通しへの自信の裏返しとも言えるかもしれません。
次に、IonQは4月10日の市場全体下落日に+2.53%(終値$28.79)と底堅い動きをしました。Cepheusのニュースが出たRGTIと同じ日に揃ってプラスで終わったことは、量子セクター全体のセンチメントの底堅さを感じさせます。
保有者として「IONQ株はまだ高い」と感じながらもホールドし続けているのは、こういった業界全体の成長ストーリーへの期待があるからです。
【出典】 - https://quantumzeitgeist.com/ionq-predicts-850000-worker-gap-quantum/
投資家目線の考察——強気と弱気、両面から整理する
今回の3つのニュースを振り返ると、保有銘柄のRGTI・QBTS・IONQが同じ期間に揃って重要なアップデートを出したことになります。これは偶然というよりも、量子コンピュータセクターが実用化に向けて加速している局面の表れかもしれません。
強気の材料としては、RGTIの製品進化・QBTSの戦略的拡張・IONQの業界成長見通しと、それぞれ異なる方向から「量子は前に進んでいる」というシグナルが届いている点です。市場全体が軟調だった日でも保有銘柄がプラスで終えた動きも、個人的には心強く感じました。
一方で冷静に見ると、QBTSの買収は財務負担を伴うこと、RGTIはまだ黒字化には遠い段階にあること、IONQの「85万人不足」はあくまで将来予測にすぎないことも事実です。期待と現実のギャップが株価に織り込まれすぎると、失望売りが起きやすいフェーズでもあります。
私自身は4銘柄をホールドしながら「もう少し実績の積み上がりを待つ」スタンスを変えていません。個別のニュースで一喜一憂せず、じっくり構えていきたいと思います。投資判断はあくまでご自身でご確認ください。
まとめと来週の注目ポイント
4月14日は「World Quantum Day(世界量子デー)」——量子コンピュータの啓発を目的とした国際デーです。米国各地でイベントが開催される予定で、業界全体の注目が集まる一週間になりそうです。また、QBTSの買収について資金調達の方法や統合スケジュールの詳細がどう出てくるかも注目しています。
それでは、また。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資は必ずご自身の判断と責任のもとで行ってください。