
NvidiaのAI参入で量子株が週間60%超の急騰——Rigetti・D-Wave・IonQに何が起きたか
前回の記事ではD-WaveによるQCI買収の資金調達詳細と、4月14日のWorld Quantum Dayの動向に注目していました。Quantum Dayは予想通り業界全体が盛り上がりましたが、今週最大のサプライズはそれを上回る「Nvidia発」のニュースでした。量子株全体が短期間で急騰し、保有銘柄のRGTI・QBTS・IONQすべてに影響が及んでいます。
Nvidiaが量子AIモデル「Ising」を公開——量子株が3日連続で急騰した理由
4月14日〜16日にかけて、IonQ・D-Wave・Rigetti・QUBTなどの量子関連株が3日連続で大幅上昇しました。その直接の引き金となったのが、半導体大手Nvidia(NVDA)がオープンソースの量子コンピュータ向けAIモデル「Ising(イジング)」を公開したことです。
「Ising」とは量子系の最適化問題を解くためのモデル(数学的な枠組み)の名前です。Nvidiaが今回公開したのは、この枠組みを使って量子コンピュータの誤り訂正(計算ミスを自動で修正する仕組み)とキャリブレーション(精度調整)を大幅に改善するためのオープンソースAIモデルです。量子コンピュータ業界が長年頭を悩ませてきた2つの難題に、Nvidiaが「AIで解決策を提供する」と名乗りを上げた形になります。
なぜD-Waveがとりわけ恩恵を受けたか
D-Waveが採用している「量子アニーリング」という計算方式は、もともとイジングモデルの枠組みと親和性が非常に高い方式です。Nvidiaが「イジング向けAIモデル」を公開したことで、「D-Waveの方式がGPUベースのAIと組み合わさって性能が飛躍的に向上する可能性がある」と市場が解釈しました。QBTS株は5日間で約50〜60%の上昇を記録し、今週最も動いた銘柄のひとつになりました。
D-WaveのCEO Alan Baratz氏はYahoo Financeのインタビューで「もし私がNvidiaだったらビクビクする(shaking in my boots)」と発言し、量子コンピュータがAIアクセラレーターを駆逐する可能性があると強気の見通しを示しています。
IonQ(IONQ)も同期間に+4%、Rigetti(RGTI)も+3%と連動して上昇しており、NvidiaのIsingモデル公開が量子セクター全体への「お墨付き」として機能した形です。なかにはXanadu Quantum Technologyのように5日間で+200%超を記録した銘柄も出ています。
市場はどう評価しているか
Yahoo FinanceやMotley Foolの記事では「今回の動きはRetail hype(個人投資家のお祭り騒ぎ)ではなく、明確なカタリスト(材料)がある」と分析されています。一方で「ファンダメンタルズ(業績の実態)はまだ追いついていない」という冷静な声もあり、IonQについては「Bull vs Bear(強気 vs 弱気)」特集が組まれました。IonQの直近の売上高は前年比400%超という驚異的な伸びを見せながらも、「割高かどうか」について活発な議論が続いている状況です。

Rigetti、インド政府とCepheus-1の8.4百万ドル契約を締結——新たな政府顧客の獲得
4月16日、Rigetti Computing(RGTI)がインド政府とのあいだでCepheus量子コンピュータの8.4百万ドル(約12億円)の契約を締結したことが明らかになりました。
この契約は、前回の記事でもご紹介した108量子ビットのCepheus-1-108Qを対象としたものです。Rigettiにとってインドは新規の政府顧客であり、既存の米国・欧州市場に次ぐ第三の市場拠点になりえます。
インド量子市場の背景
インドは近年、量子コンピュータ分野への国家投資を積極化しています。インド政府の「ナショナル・クォンタム・ミッション(NQM)」は2023年に約6,000億円規模の投資計画を発表しており、国産量子コンピュータの開発と並行して海外企業との連携も加速しています。政府機関・大学・研究機関が量子コンピュータを活用するための基盤整備が進んでいる段階であり、Rigettiはこの流れにうまく乗った形です。
RGTI株への影響と保有者としての見方
4月16日のRGTI終値は$19.45(前日比+1.78%)。Nvidiaのニュースで量子株全体が上昇した流れもありましたが、インド契約という独自の材料が加わったことで、RGTI株への好感度がさらに高まっています。
保有者として見ると、Cepheus-1が発表後すぐにインド政府という実際の顧客を獲得したことは、「技術だけでなく商業面での前進」として素直に評価できます。1,000量子ビットへのロードマップと着実な顧客獲得が両立しているとすれば、長期的な企業価値向上につながる可能性があります。
ただし、8.4百万ドルはRigettiの現在の収益規模からすれば大型案件ではあるものの、まだ黒字化には遠い段階にあることに変わりはありません。1件の大型契約で先走りすぎず、継続的な受注拡大を確認していくことが大切だと考えています。
投資家目線の考察——急騰後の量子株、どう向き合うか
今週の量子株は「Nvidia発の外部カタリスト」と「Rigetti単独の契約ニュース」が重なり、保有銘柄すべてが上昇した1週間でした。QBTS(D-Wave)が5日間で60%近く上昇したことは、前回からのホルダーにとって嬉しい動きです。
強気の材料を整理すると、①NvidiaというAI業界の覇者が量子分野に本格的に足を踏み入れた、②Rigetti(RGTI)が新規の政府顧客を獲得し製品の商業展開が加速している、③IonQ(IONQ)の前年比400%超の収益成長が改めて市場に評価されている、という3点があります。量子コンピュータが「夢の技術」から「具体的なビジネス」に変わりつつあるというシグナルが積み重なっています。
一方で冷静に見ると、今週の急騰はNvidiaの発表という「一つの外部材料」に依存した動きでもあります。Nvidiaが量子分野に参入することで、長期的にはIonQやRigettiと競合するシナリオもゼロではありません。また、D-Wave(QBTS)は前回発表した5.5億ドルの大型買収(QCI)について資金調達の方法や統合スケジュールの詳細がまだ明らかになっておらず、希薄化リスクは引き続き残っています。さらに今週はIonQ株の取引タイミングをめぐる米国議員のインサイダー疑惑も浮上しており、センチメントに影を落とす可能性もあります。
私の方針は変わらず「4銘柄をホールドしながら実績の積み上がりを待つ」スタンスです。Nvidiaのニュースで短期的に評価が上がることと、量子コンピュータが実際に収益を生み続けることは別の話です。急騰に浮かれすぎず、じっくり見守っていきたいと思います。
投資判断はあくまでご自身でご確認ください。
まとめと来週の注目ポイント
来週はD-Wave(QBTS)をはじめとする第1四半期(Q1)決算シーズンが本格化します。今週の急騰直後だけに決算内容次第で大きな価格変動が予想されます。また、QCI買収の資金調達方法と統合スケジュールの公式発表も続報を待っています。IonQの年間売上高の推移についても引き続き注目しています。
それでは、また。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資は必ずご自身の判断と責任のもとで行ってください。