
前回の記事ではIonQの「Walking Cat」アーキテクチャと、QuantinuumのIPO準備申請に注目しました。あの時点でIonQは既に4月中に約60%の上昇を記録していましたが、今週はその後日談として「なぜ4月これほど急騰したか」を改めて整理しつつ、5月6日のQ1決算に向けた見どころをお伝えします。合わせて、米国で「国家量子イニシアティブ再授権法(H.R. 8462)」が下院委員会を通過したという政策面の動きも取り上げます。
IonQ、4月に56%急騰:決算前夜に知っておきたいこと
4月のIonQ(ティッカー:IONQ)は、月間+56.5%という驚異的な上昇を記録しました。米国株全体が関税問題などのマクロ懸念で不安定な動きを続ける中、量子コンピュータ銘柄の中でも特に目立つ動きでした。
保有者としては、素直にうれしい展開です。
一方で冷静に見ると、直近高値からはまだ44%下落した水準にあります。急騰したとはいえ、昨年の高値圏に戻ったわけではない。この事実は忘れないようにしたいところです。
なぜ4月に急騰したのか。要するに、IonQが「夢の技術」から「実際に動くビジネス」へ一歩踏み込んでいることを示す材料が相次いだからです。
CEOのニコロ・デ・マシ氏は年次レターで「2025年は量子コンピュータの商業化における変曲点だった」と宣言しました。単なる技術研究の会社ではなく、フルスタックの量子技術プロバイダーとして商業的な牽引力が増していると強調しています。
さらに、IonQとEinride(電動フレートのスタートアップ)が共同で進めた量子最適化パイロットの成果も公表されました。電気貨物フリートの配車スケジューリングという実業務の問題に量子コンピューティングを応用し、競争力ある結果が出たというものです。一見地味なニュースに見えますが、「実際の商業案件で結果を出した」という点では、これまでとは少し違う重みがあります。
そして今週最大の注目点は、5月6日のIonQ Q1(2026年1〜3月期)決算発表です。ここには2つの見方があると考えています。
強気の見方は、強いバックログ(受注残)と売上成長への期待です。CEO年次レターが自信満々だった点も、市場の期待感を高めています。弱気の見方は、高いバリュエーション(株価が業績に対して割高な水準)と継続する赤字です。さらに、関税問題などマクロ環境の不透明さも懸念材料として挙がっています。
私自身は4銘柄をホールドしながら、「決算の中身をしっかり見届けてから判断する」スタンスを変えていません。好決算でも「sell the news(噂で買って事実で売る)」が起きることはよくある話ですから、慌てないようにしたいと思います。
【出典】
- Why Quantum Stock IonQ Soared 56.5% In April(The Motley Fool)
- Should You Buy, Hold, or Sell IonQ Stock Before Q1 Earnings?(Yahoo Finance)
- IonQ CEO Says 2025 Marked Turning Point for Quantum Commercialization(The Quantum Insider)
- IonQ's Quantum Freight Pilot Adds Real World Context For Investors(Yahoo Finance)
米国で量子政策法案が前進:商業化フォーカスが鮮明に
量子コンピュータ銘柄に投資するうえで、政策環境は非常に重要なファクターです。今週、そこに大きな動きがありました。
米国下院の科学・宇宙・技術委員会が「国家量子イニシアティブ再授権法(H.R. 8462)」を承認し、下院本会議での全体審議へ進めることが決まりました。
この法案は、2018年に成立した「国家量子イニシアティブ法(NQI法)」の延長・更新版です。要するに、米国が量子コンピュータ技術を国家戦略として支援し続けるための予算と枠組みを再整備するものです。
ここには2つのメッセージがあると考えています。
ひとつは「米国政府は量子コンピュータへの投資を継続する」という意志表示です。超党派で支持されている点も、長期投資家にとってはポジティブなシグナルです。もうひとつは、今回の法案が「商業化」に重点を置いているという点です。研究開発だけでなく、2026年以降の実際のデプロイメント(現場への展開)を射程に入れており、商業応用に近い企業が恩恵を受けやすい設計になっています。
IBM、IonQ、Ciscoといった企業が注目銘柄として挙げられています。IBMは量子コンピュータの商業利用で既にトップクラスの実績があり、政策の後押しで企業向けサービスがさらに広がる可能性があります。IonQも、フルスタック型の量子サービスとして商業化の波に乗れる位置にいます。
QUBT(量子コンピューティングInc.)についても、NeuraWave(光学ベースのAI推論プラットフォーム)が製造フェーズに入ったと発表しており、商業化の流れとうまく噛み合ってきています。
とはいえ、法案が本会議を通過し、さらに上院でどう扱われるかはまだ不透明です。「法律として成立すること」と「実際に予算が付くこと」はまた別の話ですから、過度な期待は禁物です。
【出典】
- U.S. Quantum Policy Bill Advances to Full House Consideration(The Quantum Insider)
- National Quantum Policy Bill Advances: IBM, IonQ, Cisco in Focus(Yahoo Finance)
- Assessing Quantum Computing (QUBT) Valuation After NeuraWave Photonic Platform Milestone(Yahoo Finance)
個人投資家としてどう考えるか
今週のニュースを踏まえ、量子コンピュータ銘柄への投資について整理します。
強気の材料としては、IonQの商業化の進展(物流パイロット成功、CEOの強気コメント)と、米国の政策的後押し(量子法案の前進)が挙げられます。前回記事で触れたIonQの技術報告書やQuantinuumのIPO準備も合わせると、今の量子業界は「いよいよ本格化してきた」感があります。
一方で冷静に見ると、IonQは直近高値からまだ44%下落しています。5月6日の決算で市場の期待を少しでも下回れば、大きく売り込まれるリスクもあります。量子株全体のボラティリティ(価格変動の激しさ)は相当なものです。
私自身は、IonQ・Rigetti・D-Wave・QUBTの4銘柄を引き続きホールドしながら、「実績の積み上がりを静かに見届ける」スタンスを変えていません。双子の子どもたちが大きくなる頃にこの業界がどこまで進んでいるか。そんな10年スパンで眺めながら、じっくり付き合っていきたいと思っています。
来週は5月6日のIonQ Q1決算が最大の注目ポイントです。決算内容と市場の反応、またこのブログでお伝えします。それでは、また。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身でご確認ください。