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量子コンピュータ株Q1決算:「未来買い」が生む歪みを読む

量子コンピュータ株Q1決算:「未来買い」が生む歪みを読む

Q1決算シーズンが出揃いました。IonQ・D-Wave・Rigetti・QUBTの4銘柄が相次いで決算を発表し、「予想を超える数字」と「予想を裏切る株価」が入り混じる展開となりました。各社の結果を貫く共通テーマがあるとすれば、市場が「現在の売上」より「未来のポテンシャル」に価格をつけているという構造です。今週はその現実を、IonQの続報も含め3つのテーマで整理します。


IonQ — 決算後の株価はどこへ、SkyWater統合が変えるもの

前回の記事でお伝えしたとおり、IonQは2026年Q1に前年比755%増収という驚異的な数字を出しました。しかし株価は発表翌日に下落。典型的な「Sell the News(材料出尽くし)」の展開でした。

その後も株価の軟調は続いており、今週は「How Low Can IONQ Stock Go?(IonQの株価はどこまで下がるか)」という分析記事が登場しました。現在の時価総額は約210億ドル。この水準が正当化されるかどうかは、「AQ 64」という技術マイルストーンの達成にかかっている、というのが記事の核心です。

AQ(Algorithmic Qubit:アルゴリズム量子ビット)とは、IonQが独自に定義した実用性の指標です。単純な量子ビット数ではなく、「実際のアルゴリズムがどれだけ正確に動くか」を示すもので、「本当に使える量子コンピュータにどれだけ近いか」の目安として機能します。現在はAQ 35を達成済みで、AQ 64が「2040年の量子経済への入口」と位置づけられています。

記事が指摘するのは、AQ 64が実現すれば大きなアップサイドがある一方で、達成できなければ同規模のダウンサイドリスクがあるという対称性です。$210億という時価総額は、この未来をすでに相当織り込んだ価格と言えます。

一方で、SkyWater Technology(半導体受託製造)との合併も着実に進んでいます。今週、SkyWater株主が合併を正式承認し、Q2〜Q3のクローズに向けて規制当局の承認を待つ段階に入りました。この合併の本質は、IonQがこれまで外部に頼っていた製造工程を内製化する「垂直統合」モデルへの転換です。量子チップの設計から製造までを一貫して手がけることで、コスト削減と技術的な差別化が期待されます。

株価の短期的な動きはネガティブに見えますが、SkyWater統合という長期的なゲームチェンジャーが静かに進行していることは見落とせません。

【出典】


D-Wave — 「売上ミスなのに株価上昇」の謎を解く

D-Wave(QBTS)のQ1決算は、一見するとネガティブな内容でした。売上高は見込み比マイナス43%という大幅なミス。それでも株価は上昇しました。なぜか。

答えは「ブッキング(受注残)」にあります。Q1のブッキングは3,340万ドル(約50億円)に達し、前年同期比で約2,000%増という衝撃的な数字です。この急増を牽引したのは、ある大学システム向け2,000万ドル案件でした。

ブッキングとは、まだ売上として計上されていないが、契約が確定している受注のことです。「今はまだ儲かっていないが、これから売上が入ってくる予約残高」と理解するとわかりやすい。市場が売上ミスよりもブッキング急増を評価したのは、「現在の数字より、パイプラインの膨らみが重要」という判断があったからです。

前のテーマで触れたIonQ・SkyWaterの垂直統合戦略と対比すると、D-Waveのアプローチは対照的です。D-Waveが採用する「量子アニーリング」は、特定の最適化問題(「最短ルートをどう組むか」「在庫をどう配分するか」など)に特化した方式で、物流・金融・医薬品分野での実用化が先行しています。大学や研究機関が顧客として拡大しているのも、こうしたユースケースの広がりを反映しています。

ただし、マイナス43%という売上ミスは軽視できません。受注が膨らんでも、それが実際の売上に転換されるかどうかは今後の実行力次第です。「受注は積み上がっているが、売上化のスピードが遅い」という課題は、引き続き注視が必要です。ブッキングが「実力の証明」になるか「期待の先食い」になるかは、次回以降の決算で明らかになってくるでしょう。

【出典】


Rigetti・QUBT — 収益サプライズの陰で問われる「評価の妥当性」

IonQとD-Waveに続き、RigettiとQUBTも決算を発表しました。両社ともポジティブな数字でしたが、それぞれ異なる問いを市場に突きつけています。

Rigetti(RGTI)は、売上高が見込み比+35.6%、EPSが見込み比+14.4%と、市場予想を大きく上回りました。108量子ビットの「Cepheus-1-108Q」システムが稼働し、国際展開も進んでいます。数字だけ見れば好決算です。

しかしこの好決算と同じ週、ある記事が注目を集めました。「Rigettは時価総額63億ドルで年間売上がわずか700万ドル。代わりに買うべき2銘柄はこれだ」というタイトルです。時価総額を年間売上で割ると約900倍。もちろん量子株は「現在の収益」でなく「将来の市場規模」で評価される側面があります。ただ、これだけの乖離は投資家として冷静に向き合うべき数字です。

QUBT(Quantum Computing Inc.)は、売上高が見込み比+13.6%のサプライズ。さらにLuminar Semiconductor(光子量子チップ製造)とNuCrypt(量子暗号・通信)の2社を買収し、株価は+23.2%の大幅上昇でした。自社のFab 1(製造拠点)が早期収益を生み始め、Fab 2の建設も進行中です。

QUBTの戦略はIonQのSkyWater統合と方向性が重なります。光を使った量子技術(量子フォトニクス)の分野で、設計から製造までを一貫して担う体制を構築しつつある点です。規模はまだ小さいですが、「製造の内製化」という量子業界全体のトレンドに沿った動きと見ることができます。

今週の3テーマを通じて見えてきたのは、量子コンピュータ企業各社が「現在の収益モデル」より「製造・受注・技術開発の次のステージ」を市場に示すことで株価を支えているという構造です。どの銘柄も、今後1〜2年でその評価が「先見性のある投資」か「根拠なき楽観」かが問われる局面に入っています。

【出典】


投資家目線の考察

今週4銘柄の決算を振り返ると、一つの共通点が浮かび上がります。「現在の売上水準では、今の株価は説明できない」という事実です。

IonQは時価総額約210億ドルに対してQ1売上は数千万ドル規模。Rigettは時価総額63億ドルに対して年間売上700万ドル。D-Waveは売上ミスでも株価が上がり、QUBTは売上規模より買収・製造拡張が評価されました。市場はいま、「量子コンピュータが本格普及した世界」を割り引いた価格で株を買っています。これは強気に見れば「先見性のある投資」、弱気に見れば「夢想に乗じた投機」とも言えます。

私自身、IonQ・Rigetti・D-Wave・QUBTの4銘柄を保有しています。今週の決算を受けて保有比率を変えるつもりはありませんが、1点だけ意識していることがあります。それはマイルストーンの進捗を定期的にチェックすることです。

IonQであればAQ 64達成の進捗とSkyWater統合の完了時期。D-Waveであれば受注がどれだけ売上に転換されるか。Rigetti・QUBTであれば製造拡張と顧客獲得の動き。これらが「夢から現実へ」移行する証拠になります。

量子コンピュータ株はハイリスク・ハイリターンの代表格です。「全力投資」ではなく、許容できるリスク範囲内での少量保有が、精神的にも合理的だと考えています。


まとめ

来週以降の注目ポイントは、IonQのSkyWater合併に対する規制当局の承認の行方です。承認が下りればQ2〜Q3のクローズが現実味を帯び、垂直統合モデルへの転換が具体化します。また、D-Waveの巨大受注が売上として計上されるペースも引き続き注目したいと思います。

投資はあくまで自己責任ですので、本記事は参考程度にとどめ、最終判断はご自身でお願いします。それでは、また。