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量子コンピュータ株:IonQ合併承認で垂直統合が始動

量子コンピュータ株:IonQ合併承認で垂直統合が始動

SkyWater合併の株主承認、Rigettiの108量子ビットクラウド公開、D-Waveの過去最高受注額。今週の量子コンピュータ株は、決算シーズンを経て「次の一手」が動き出した週でした。各社が描く戦略の方向性と、業界全体の裾野拡大の動きを、保有投資家目線で整理します。


IonQ:SkyWater合併が株主承認通過、垂直統合戦略が本格始動

5月14日、SkyWater Technologyの株主がIonQとの合併を承認しました。この投票通過を受けてIonQの株価は当日15.1%急騰。前回の決算発表後(Q1売上755%増)に「Sell the News(材料出尽くし)」で下落した株が、今度はこのニュースで大幅上昇した格好です。

合併にはまだ規制当局の承認など残るステップがありますが、株主承認という最大のハードルを越えたことで、実現の確度が大きく高まりました。SkyWaterはアメリカ国内の半導体製造工場を持つ企業です。IonQが自社製品である「イオントラップ型」量子コンピュータ(電場でイオンを閉じ込めて量子ビットとして使う方式)に必要なチップを、外部発注ではなく自社グループで設計・製造できる体制を目指しており、それがこのM&Aの本質です。

同じタイミングで、IonQはColorado州Boulderに新しいR&D・半導体テスト施設をオープンしたことも発表しました。設計から製造・テストまでを一貫して行う「垂直統合(バリューチェーンの上流から下流まで自社で持つ戦略)」が、具体的な形を取り始めています。

投資家目線では2つの視点があります。ポジティブ面は、内製化によってコスト削減とサプライチェーンリスク低減が見込めること。そしてアメリカ国内製造であることが、政府調達やNSFなどの補助金獲得で有利に働く可能性があります。一方でリスクも直視する必要があります。合併完了には引き続き規制承認が必要で、不確定要素が残ります。また、IonQは高い成長期待を株価に織り込んでいる銘柄であり、「期待通りに進まなかった場合」の株価下落余地も大きい。15.1%の急騰後に高値を追うのか、押し目を待つのかは慎重な判断が求められます。

【出典】


Rigetti vs. D-Wave:「クラウド展開」と「受注積み上げ」、対照的な戦略

Rigetti:108量子ビットで商業化を加速

Rigettiは今週、108量子ビットの新システム「Cepheus-1-108Q(ケフェウス1)」をクラウド経由で広く公開しました。同時に、インドの国立研究機関C-DACとの商業契約を発表し、英国でも数年内に1,000量子ビット超のシステム開発を目指す拡張計画を公表しています。Q1売上が前年比199%増というデータも、この勢いを裏付けています。

Rigettiが採用する「超伝導型」量子コンピュータ(電気抵抗がゼロになる特殊な材料を使う方式)は、IBMやGoogleも採用する主流アーキテクチャです。クラウドで使えるようにして商業利用を広げる戦略は、量子コンピュータをまず「試せるサービス」として普及させてからハードウェア販売につなげるという合理的なアプローチです。

D-Wave:売上より「受注残」に注目

一方のD-Waveは、Q1売上が$2.86Mと前年比で減少したものの、受注額が過去最高の$33.4Mを記録しました。同社はさらに、従来の「量子アニーリング(最適化問題を得意とする方式)」に加えて、汎用的な「ゲートモデル型」も組み合わせたデュアルプラットフォーム戦略を発表。2つの異なる量子コンピュータ方式を組み合わせることで、より多様な問題に対応しようという方針です。

投資家が量子株を見る際に意識したいのが「売上 vs 受注残」の違いです。量子コンピュータはシステム納品・契約から実際の売上計上までにタイムラグが生じやすい。D-Waveのように「今の売上は少ないが受注が積み上がっている」場合、それは将来売上の先行指標と見ることができます。$33.4Mという過去最高の受注額は、ビジネスの実需が確かに育ってきているサインとも読めます。

【出典】


業界の裾野が広がる:Google・Xanadu・Sygaldryの動き

主要4銘柄の動き以外にも、量子業界全体を俯瞰する動きが今週は目立ちました。

Googleは$10M(約15億円)を投じた「量子生物学研究プログラム」を発表しました。量子コンピュータと量子センシング技術をAIと組み合わせ、医療・創薬分野の研究に活かすというもので、「量子が実際の産業課題に使われる時代」が近づいていることを示唆しています。

カナダのXanadaは、光を量子ビットとして使う「フォトニック方式」の量子コンピュータを開発しており、上場後初の決算で売上が4倍($2.8M)に成長したと報告しました。光を使う方式は室温で動作できる可能性があり、冷却装置が不要になれば量子コンピュータの普及コストが大幅に下がるという期待があります。

さらに、スタートアップのSygaldryが$139M(約200億円)の資金調達を完了しました。「量子加速AIサーバー」の開発を目指しており、Breakthrough Energy Venturesなど有力VCが主導しています。AIと量子の融合という領域に、大型資金が流入し始めていることは注目です。

主要4銘柄に限らず、量子業界全体のエコシステムが確実に拡大しています。これは個別銘柄への投資環境としても、長期的にはポジティブな背景と言えるでしょう。

【出典】


投資家目線の考察

今週の全体感を一言で言えば、「量子株の転換点が近いかもしれない」週でした。

IonQの合併承認通過、RigettiのQ1売上199%増、D-Waveの過去最高受注額、これらは単なる決算数字の話ではなく、各社が「技術開発フェーズ」から「商業展開フェーズ」へと移行しつつあることを示していると考えられます。QUBTも決算発表後に14%超の上昇を見せており、量子株全体にポジティブな流れがあります。

強気の視点では、業界全体のエコシステム拡大(Google、Xanadu、Sygaldry)が量子株の底上げ要因になりうること、そして各社の「受注残・バックログ」が将来売上の先行指標として機能し始めていることが挙げられます。

一方で慎重に見たい点も残ります。IonQ合併は規制承認待ち、Rigettiの売上成長も絶対額はまだ小さく、D-Waveは今期売上が前年比で減少しています。量子コンピュータ銘柄は全般として「期待先行型」の高バリュエーション株であり、マクロの金利変動や市場全体のリスクオフには脆弱です。

私自身はIonQ・Rigetti・D-Wave・QUBTの4銘柄を引き続き保有しており、今週の動きを受けてポジションを大きく変える予定はありません。むしろ、来週5/21のRigetti CEOによるカンaccordシンポジウム発言、そしてD-Waveが予告する初のNYSE Investor Dayが重要な注目材料と考えています。


まとめ

来週は5月21日のRigetti CEOカンファレンス発言と、D-Waveの初Investor Day(NYSE)が重要イベントです。発言内容次第で株価が動く可能性があるので、注目しておきたいと思います。なお、本記事は投資の参考情報であり、投資判断はご自身の責任でお願いします。それでは、また。